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AISASとは?AIDMAとの違い・5フェーズ別の施策設計を実例で解説

AISASとは?AIDMAとの違い・5フェーズ別の施策設計を実例で解説

「AISASというマーケティングモデルを聞くようになったが、AIDMAと何が違うのか整理できていない」「自社のマーケティング施策をAISASのフェーズに当てはめたいが、Search・Share段階で何をすべきかが具体的に描けない」「フレームワークは知っているが、現代のSNS・検索行動を踏まえた施策設計に落とし込めない」——マーケティング担当者・事業責任者にとって、AISASは現代の消費者行動を捉え直す代表的なフレームワークである一方、AIDMAとの違いや各フェーズで何を設計すべきかという実務翻訳が曖昧なまま使われがちな概念でもあります。本記事では、AISASとは何かという基本定義から、AIDMAとの構造的な違い、AISCEAS・DECAX・5Aといった発展モデルとの関係、Attention・Interest・Search・Action・Share各フェーズの施策設計、BtoCとBtoBでの活用パターン、そしてよくある失敗までを、現場で実際に動かせる粒度で体系的に解説します。

AISASとは

AISASとは、消費者が商品やサービスに出会ってから購買・推奨に至るまでの行動プロセスを、Attention(注意)→Interest(関心)→Search(検索)→Action(行動・購買)→Share(共有)の5段階で捉えるマーケティングモデルのことです。2004年に電通が提唱したフレームワークで、インターネット時代の消費者行動を表現するモデルとしてAIDMA(Attention→Interest→Desire→Memory→Action)の発展版として広く普及しました。AISASの最大の特徴は、購買前の『Search(検索)』と購買後の『Share(共有)』を行動プロセスに正式に組み込んだ点にあり、現代の消費者がGoogle検索・SNS・口コミサイトを通じて能動的に情報収集し、購入後はSNSやレビューで体験を発信する行動様式を、戦略フレームワークとして体系化したものと位置付けられます。

AISASの5フェーズは、それぞれ消費者の認知状態と行動が異なります。Attentionは商品・ブランドに『気づく』段階、Interestは『興味を持つ』段階、Searchは『自分で調べて比較検討する』段階、Actionは『購入・申し込みなどの具体的行動を起こす』段階、Shareは『体験を他者に共有・発信する』段階を指します。従来のマス広告中心の購買行動モデルでは、企業からの発信を受動的に受け取って購買に至る一方向の構造で消費者を捉えていましたが、AISASでは消費者自身が検索と発信の主体となる『情報生産者としての消費者』が前提に置かれ、企業のマーケティングも一方向の発信だけでなく、消費者の検索行動への対応と共有行動の促進までを設計対象に含めるようになります。

AISASがBtoC・BtoBを問わず幅広い業界で活用されている背景には、購買行動のデジタル化と情報接点の分散があります。総務省の通信利用動向調査などでも示されているように、商品検討時にスマートフォンで検索する習慣・購入前に口コミや比較記事を確認する習慣・購入後にSNSやECサイトでレビューを発信する習慣は、もはや一部の層の行動ではなく、幅広い消費者層に定着しています。マーケティングを設計する際に、検索行動と共有行動を前提に置けるかどうかが、現代の購買プロセスを正しく捉えるための起点となっており、AISASはその思考の土台として実務で広く参照されています。

AISASと関連購買行動モデルの違い

AISASは、AIDMA・AISCEAS・DECAX・5A(Five A's)といった近接する購買行動モデルと混同されがちです。それぞれの違いを正しく押さえることで、自社のマーケティング設計のなかでAISASをどう位置付けるか、あるいは他モデルとどう組み合わせるかを判断しやすくなります。

AISASとAIDMAの違い

AIDMAは、1920年代にアメリカの実務家サミュエル・ローランド・ホールが提唱したとされる古典的な購買行動モデルで、Attention(注意)→Interest(関心)→Desire(欲求)→Memory(記憶)→Action(行動)の5段階で消費者の心理プロセスを捉えます。AIDMAは『心理段階を経て購買に至る』という心理モデルで、テレビ・新聞・ラジオといったマスメディア中心の時代に繰り返し広告で記憶を強化することで購買に至らせる前提に立っていました。AISASとAIDMAの最大の違いは、AISASがDesireとMemoryの代わりにSearch(検索)とShare(共有)を組み込み、消費者の能動的な情報収集行動と購買後の発信行動を行動プロセスに正式に位置付けた点にあります。

もう一つの大きな違いは、想定されるメディア環境です。AIDMAはマス広告で『見せて記憶させる』ことが施策の中心であり、企業の発信から消費者の購買までは一方向の構造で描かれます。一方AISASでは、Attention・Interest段階の発信に加え、Search段階での検索エンジン対策・比較サイト対策・口コミ対策、Action段階でのECやLPでの転換設計、Share段階でのSNSでの体験投稿促進といった、消費者の能動的行動への対応が施策設計の中核に組み込まれます。AIDMAが完全に古いわけではなく、ブランド想起や記憶段階の重要性は今も残りますが、現代の消費行動を捉えるうえではAISASのほうが実態に近いフレームワークとして広く採用されています。

実務での使い分けとしては、マス広告主体で短期間にブランド認知を一気に高めたい新商品ローンチや、高関与商材で記憶段階の強化が成果を左右する局面ではAIDMA的な発想が引き続き有効です。一方、デジタル接点中心で検索と口コミが購買に直結する商材、SNSでの拡散が認知獲得を左右する商材、リピーターや推奨者の発信が次の新規顧客獲得につながる商材では、AISASを軸に施策全体を設計するのが定石となります。

AISASとAISCEASの違い

AISCEASは、AISASをさらに詳細化した発展モデルで、Attention→Interest→Search→Comparison(比較)→Examination(検討)→Action→Share の7段階で消費行動を捉えます。Search段階のあとに、複数候補を並列比較する『Comparison』フェーズと、最終決定に向けて吟味する『Examination』フェーズを追加した点が違いです。高額商材・BtoB商材・長期検討商材のように、Search段階のなかでも比較表・口コミ評価・導入事例の精査が時間をかけて行われる領域では、AISCEASのほうが消費行動の実像に近い解像度で描けます。一方、日用消費財・低額EC商材のように検索から購買までが短い領域では、AISASの粒度で十分施策設計が機能するため、商材特性に応じて使い分けるのが実務的なアプローチです。

AISASとDECAXの違い

DECAXは、2015年に電通が提唱したコンテンツマーケティング時代の消費行動モデルで、Discovery(発見)→Engage(関係構築)→Check(確認)→Action(行動)→Experience(体験共有)の5段階で構成されます。AISASとの大きな違いは、最初の接点を企業の広告発信ではなく『消費者がコンテンツを発見する』段階に置き、発信者と受け手の関係構築を購買前のプロセスに明示的に組み込んでいる点です。オウンドメディアや動画チャネルで価値あるコンテンツを継続発信し、消費者から発見・信頼獲得を経て購買に至るコンテンツマーケティング型のビジネスモデルでは、DECAXのレンズで施策設計するほうが実態に合います。AISASはあくまで広告・検索・SNS全体を含む包括的フレームワークであり、DECAXはコンテンツ起点の接点設計に特化した補完的モデルと捉えられます。

AISASと5A(Five A's)の違い

5A(Five A's)は、フィリップ・コトラーが『マーケティング4.0』で提唱した購買行動モデルで、Aware(認知)→Appeal(訴求)→Ask(調査)→Act(行動)→Advocate(推奨)の5段階で構成されます。AISASとの構造は近く、Aware・Appealが Attention・Interest に、Askが Search に、Actが Action に、Advocateが Share に対応します。5Aの特徴は、最終段階を単なる『共有』ではなく『推奨(Advocate)』と位置付け、ロイヤル顧客が新規顧客の認知と訴求を起こす『推奨者経済』の循環構造を強調する点にあります。デジタル時代の消費行動を国際的な実務文脈で議論する場では5Aがよく使われ、日本市場での実務翻訳ではAISASのほうが浸透しているため、両者は本質的に同じ思想の異なる表現として併用されているのが実態です。

AISASが注目される背景とメリット

AISASが現代のマーケティング・経営の主要テーマとなっているのは、購買行動のデジタル化・情報接点の分散・SNSによる発信主体の拡大という3つの変化が同時に進み、企業が一方的に発信するだけでは消費者に届かなくなったからです。年間数百万〜数億円規模のマーケティング投資を行う企業ほど、AISASのフェーズ構造で施策を整理し、各フェーズに過不足のない投資をできているかが、認知から推奨までを連続的に積み上げる経営課題となっています。

第一のメリットは、消費者の実際の購買プロセスに沿って施策を整理できるようになることです。AISASを基準にすると、自社の現在のマーケティング施策を Attention・Interest・Search・Action・Share の5列で棚卸しでき、『どのフェーズに過剰投資し、どのフェーズが手薄か』という構造的な問題が一目で見えるようになります。たとえばマス広告とリスティング広告には予算を投下しているが、Search段階で消費者が比較する口コミ・レビュー・比較記事への対策がゼロ、Share段階でリピーターの発信を促す仕組みが何もない、といった『フェーズ偏重』を発見できると、投資配分の組み替えで一気に成果が改善する余地が見えてきます。

第二のメリットは、部門間の役割分担と連携設計が組み立てやすくなることです。Attention・Interest段階を主に担うブランド・広告チーム、Search段階を担うSEO・コンテンツ・口コミ管理チーム、Action段階を担うEC・LP・営業チーム、Share段階を担うコミュニティ・カスタマーサクセスチームというように、AISASのフェーズで責任範囲を整理することで、組織横断のマーケティング設計が共通言語のうえで議論できるようになります。経営層への報告・予算申請の際にも、AISASの5フェーズで成果と投資のバランスを示すと、個別施策の積み上げでは説明しにくい『マーケティング全体の健康度』を伝えやすくなります。

第三のメリットは、Share段階を正式に組み込むことで、推奨・口コミ・UGCといった『顧客が起こす新規獲得』を戦略の中心に据えやすくなることです。広告費だけに依存した新規獲得は、媒体単価の高騰やプラットフォームのアルゴリズム変更で急にコスト構造が悪化するリスクを抱えますが、既存顧客のShare行動から自然発生的に新規認知が生まれる構造を作れれば、広告依存度を下げながら持続的な成長を実現できます。AISASは、この『Share駆動の成長エンジン』を施策設計に取り込むための概念的な足場を提供する点でも、現代のマーケティングにおいて経営価値の高いフレームワークとなっています。

AISAS 5フェーズ別の施策設計

AISASを実務で活用するうえで重要なのは、各フェーズで『どの指標を追い、どんな施策を打ち、何を改善するか』を具体的に設計することです。フレームワークを並べただけでは成果には結びつかず、フェーズごとの施策・KPI・改善ループをそれぞれ精緻に組み立てる必要があります。以下、各フェーズの施策設計を順に解説します。

Attention(注意)|認知獲得の施策設計

Attentionフェーズの目的は、まだ自社や商品を知らない潜在顧客の目に触れ、認知の起点を作ることです。主な施策には、テレビCM・新聞・雑誌などのマス広告、デジタルのディスプレイ広告・動画広告(YouTube・TikTok)、SNS広告(Instagram・X・Facebook)、屋外広告(OOH)、PR(プレスリリース・メディア掲載)、インフルエンサーマーケティングなどがあります。ターゲットの可処分時間と接触メディアに応じて、リーチ効率の高い媒体を組み合わせるのがこのフェーズの設計の中核です。

Attentionフェーズの主要KPIは、リーチ数(到達ユーザー数)・インプレッション数(表示回数)・動画再生数・指名検索数・ブランドリフト調査での認知率です。コンバージョン数で評価すると施策の本来の貢献を見誤りやすいため、認知段階に適した『どれだけ広く届いたか』を測る指標で正しく成果を評価することが重要です。実例として、新商品ローンチ時にテレビCMとTikTok広告を組み合わせ、CMで広く認知を作り、TikTokで具体的な使い方を見せて『気になる存在』へ昇格させるという、媒体特性を組み合わせた認知獲得設計が代表的なパターンです。

Interest(関心)|興味喚起の施策設計

Interestフェーズの目的は、認知された商品・ブランドへの『もっと知りたい』『良さそう』という関心を引き出し、Search行動への移行を促すことです。主な施策には、SNSでのブランドアカウント運用、オウンドメディア記事、動画コンテンツ(YouTube・Instagramリール・TikTok)、メールマガジン、ブランドサイトのストーリー訴求、イベント・体験会・ポップアップストア、UGCを活用した共感喚起などがあります。

InterestフェーズではAttentionと違い、商品の機能・価値・世界観を『じっくり伝える』設計が求められます。主要KPIは、SNSフォロワー数・エンゲージメント率・サイト滞在時間・回遊率・メールマガジン登録数・指名検索数の増加です。Interestが薄いままSearch段階に進むと、検索された時点で『なんとなく知っているが買う気はない』状態に留まり、コンバージョンに至りません。Interest段階で価値訴求と世界観の構築に投資することで、Search段階での検索意欲とAction段階での購入意向の両方が底上げされる、後続フェーズ全体の効率を決定づける投資領域として位置付けるのが実務的な発想です。

Search(検索)|検索・比較対応の施策設計

Searchフェーズの目的は、関心を持った消費者が能動的に情報を集めて比較する段階で、自社にとって有利な情報環境を整え、次のAction段階に進む確率を最大化することです。主な施策には、SEO対策(オウンドメディア・商品ページ・FAQ)、リスティング広告、比較サイト・口コミサイト対策、レビュー獲得施策、YouTube・SNSでの第三者レビュー誘発、価格.com・amazonレビュー対策などがあります。

Searchフェーズの設計で見落とされがちなのは、『指名検索』と『一般検索』の両方への対応です。指名検索(ブランド名・商品名で検索)では、公式サイトを上位表示させ、Q&Aや使い方ガイドで疑問を解消する設計が必要です。一般検索(カテゴリーや課題で検索)では、SEO記事や比較コンテンツで第三者目線の情報のなかに自社を位置付ける施策が求められます。主要KPIは、検索結果での自社サイトの順位・指名検索ボリューム・比較サイトでの評価点・口コミ評価・サイト流入数・コンバージョン率です。Search段階でネガティブな口コミや誤情報が放置されていると、Attention・Interest段階の投資が無駄になるため、ソーシャルリスニングと口コミ管理を運用に組み込むことが、Search段階の施策の前提となります。

Action(行動・購買)|転換とCX設計

Actionフェーズの目的は、Search段階で十分に納得した消費者を、ECサイト・LP・実店舗・営業商談などの購買接点で実際の行動(購入・申込・問合せ)に至らせることです。主な施策には、LP最適化・カート離脱対策・購入動線の改善・在庫表示や送料の明示・決済手段の多様化・返金保証・商品レビューの掲載・チャットサポート・店舗での接客設計などがあります。BtoBであれば、ホワイトペーパーダウンロード・無料相談予約・無料トライアル・営業商談・見積り提示・契約フローの最適化が含まれます。

Actionフェーズの主要KPIは、コンバージョン率(CVR)・購入単価(AOV)・カート離脱率・直帰率・BtoBであれば商談化率・受注率・受注単価です。Attention・Interest・Searchフェーズで多額の投資をしても、Actionフェーズの導線設計が悪ければ、最後のクリック1つで顧客を逃します。実務では、Action段階でのCVR改善1ポイントが、上流フェーズの広告費を10%以上節約するインパクトを持つことも多く、『すでに購入意向のある顧客の取りこぼし』をなくすことが、AISAS全体の費用対効果を最も大きく動かす投資領域です。

Share(共有)|推奨と口コミ拡散の施策設計

Shareフェーズの目的は、購入・利用した顧客が体験を他者に発信し、新たな潜在顧客のAttention・Interest・Searchを自然発生的に起こす循環を作ることです。主な施策には、購入後のサンキューメール・レビュー投稿依頼・SNSでのハッシュタグキャンペーン・UGC(ユーザー投稿)を企業アカウントが紹介・紹介プログラム(リファラル特典)・コミュニティ運営・カスタマーサクセスによる体験設計・推奨者プログラム(アンバサダー・公式ファン制度)などがあります。

Shareフェーズの設計で重要なのは、『投稿してもらえる体験』を商品・サービスそのものに組み込むことです。後付けでハッシュタグキャンペーンを打っても、商品体験そのものに語る価値・写真映え・驚きがなければ、Shareは発生しません。商品開発・パッケージング・店舗体験・初回利用時のオンボーディング設計を、『SNSで投稿したくなる瞬間が自然に生まれるか』という視点で見直すことが、最も持続的なShare駆動の成長エンジンを作ります。主要KPIは、UGC投稿数・自社ハッシュタグ利用数・口コミ数・NPS(推奨者ネットスコア)・紹介経由の新規顧客数・指名検索数の継続的増加です。Share段階のKPIは短期では動きにくいぶん、四半期〜年単位でのトレンドを継続観察する中長期指標として位置付けるのが適切です。

AISASを活用した施策設計の実例

AISASは、BtoC・BtoB・商品開発などさまざまな文脈で活用されています。ここでは、業界で広く観察される代表的な活用パターンを3つ紹介します。自社の業態に近いパターンを参考に、フェーズ別の施策設計の方向性を組み立ててください。

BtoC|コスメブランドの統合マーケティング設計

BtoCコスメブランドが新商品をローンチする場面では、AISAS各フェーズに対応する施策を統合設計するのが定石です。Attention段階では、TikTok広告とInstagram広告で短尺動画による商品ビジュアル訴求を行い、美容系インフルエンサーへのギフティング(製品提供)で第三者発信を起こします。Interest段階では、ブランド公式アカウントで世界観コンテンツ・使い方動画・成分解説を継続発信し、メールマガジン登録や公式LINE友達追加で見込み顧客リストを構築します。Search段階では、商品名+口コミ・商品名+成分・カテゴリー名+おすすめなどの検索キーワードに対して、公式サイト・オウンドメディア記事・@cosmeなどの口コミサイトでポジティブな情報環境を整備します。Action段階では、自社ECとAmazonの両方で在庫・送料・レビューを最適化し、初回購入特典で背中を押します。Share段階では、購入者向けのハッシュタグキャンペーン・UGC紹介・公式ファンコミュニティで体験発信を継続的に誘発します。このように5フェーズに対応する施策を組み合わせることで、媒体ごとの最適化ではなく『消費者の行動に沿った一貫体験の設計』としてマーケティング全体を統合できる点が、AISASの実務価値です。

BtoB|SaaS導入検討プロセスへのAISAS適用

BtoB SaaSの場合、Searchフェーズが長期間にわたり、複数の意思決定者が関与するため、AISCEAS的な比較・検討段階の精緻化が必要なケースも多いですが、基本構造はAISASで整理できます。Attention段階では、業界専門メディアへの記事寄稿・LinkedIn広告・カンファレンス登壇・YouTubeチャンネルで認知を作ります。Interest段階では、ホワイトペーパー・導入事例・専門家インタビュー記事・ウェビナーで関心を深め、見込み顧客リストを獲得します。Search段階では、ジャンル名+おすすめ・ジャンル名+比較・競合製品名+違いといった検索キーワードに対して、SEO記事・比較記事・第三者レビューサイトでの評価獲得・導入企業ロゴ掲載で『選ばれる候補』としてのポジションを築きます。Action段階では、無料トライアル・無料相談・営業商談・カスタマーサクセスによる導入支援フローを整備し、商談化と受注を最大化します。Share段階では、導入企業による事例公開・カンファレンスでの登壇協力・コミュニティでのユーザー間情報交換を促進し、既存顧客の発信が新たなAttention・Interestを生む循環を構築します。BtoBでは特にShare段階の質が次の商談数を左右するため、『カスタマーサクセスは新規獲得の上流施策』と位置付ける経営姿勢が、持続的な成長を支える重要な発想となります。

商品開発|AISASを起点に体験設計を組み込む

AISASは販促施策の整理だけでなく、商品開発の上流工程にも適用できます。新商品の企画段階で『この商品はAISASの各段階でどう機能するか』を問い、Attention段階で目を引く特徴・Interest段階で語りたくなる価値・Search段階で出てくる検索キーワードと比較軸・Action段階で買いやすい価格と購入動線・Share段階で投稿したくなる体験を、商品仕様とパッケージング段階から組み込むことで、発売後のマーケティング全体の効率が構造的に高まります。とくにShare段階を起点に商品開発を見直すと、『SNSで投稿したくなるパッケージ』『友人に勧めたくなる初回体験』『口コミに書きたくなる驚き』が商品設計に内在化され、広告費に依存しない自然発生的な新規認知の流入経路が組み込まれます。AISASをマーケティング部門だけのフレームワークに閉じず、商品開発・店舗体験・カスタマーサクセスを含む全社横断の設計言語として活用することが、現代の経営におけるAISASの最も戦略的な使い方です。

AISASを活用するときによくある失敗と注意点

AISASは強力なフレームワークですが、設計・運用を誤ると『フレームワークを並べただけ』『現代の購買行動と乖離した解釈になる』『フェーズ間のつながりが設計されない』といった失敗を招きます。代表的な落とし穴を押さえ、実務で意識的に避けましょう。

1つ目は、AISASの5フェーズを単なるチェックリストとして使い、各フェーズの施策を独立に設計してしまうことです。AISASの本質は『フェーズ間が連続する一連のプロセスである』という前提にあり、Attentionで作った印象がInterestを生み、Interestで深まった関心がSearchを誘発し、Searchで得た納得がActionに至らせ、Actionで満足した体験がShareにつながるという連鎖を設計対象にしなければ意味がありません。各フェーズで何をするかをリストアップしただけで、フェーズ間の橋渡しが設計されていないマーケティングプランは、消費者の実際の行動とは乖離した『フェーズごとのバラバラな施策の集合』に終わります。

2つ目は、Attention・Interest段階だけに投資が偏り、Search・Action・Share段階の施策が手薄になることです。認知獲得のためのマス広告とSNS広告には予算をつけるが、検索された時の口コミやレビューの整備に投資しない、LPやECの転換設計が古いまま放置されている、購入後のShareを促す仕組みが何もない、という偏りは多くの企業で起きがちです。AISAS各フェーズを5列の現状棚卸表として可視化し、『どのフェーズに過剰投資し、どのフェーズが空白か』を点検することで、投資配分の組み替えで一気に成果が改善する余地が見えてきます。

3つ目は、Search段階でのネガティブ情報や口コミの放置です。Attention・Interest段階で広告を打って消費者を引き寄せても、商品名で検索された結果に低評価レビュー・誤情報・他社批判のような情報が並んでいると、購入意向は一気に冷え込みます。口コミサイト・SNS・YouTubeレビューを定期的にモニタリングし、誤情報には公式が事実を発信し、改善要望には商品側で対応する運用が、Search段階の施策の前提となります。広告予算だけを増やしてSearch段階の情報環境を放置するのは、上流の投資を下流で漏らす典型的な失敗パターンです。

4つ目は、Share段階を『買ってもらったあとのおまけ』として軽視し、設計対象から外してしまうことです。Shareは『次のAttentionを起こす上流施策』であり、既存顧客の発信から自然発生的に新規顧客が生まれる構造を作れれば、広告費に依存しない成長エンジンが組み込まれます。Shareを促す体験設計・UGCを引き出す仕掛け・推奨者プログラムを商品とサービスに内在化させ、『カスタマーサクセスは新規獲得の上流』と位置付ける経営姿勢が、AISASを本来の力で機能させる前提になります。

5つ目は、AISASを一律に全商材へ当てはめ、商材特性に応じたフレームワークの使い分けを怠ることです。高額商材・BtoB商材・長期検討商材ではAISCEASのほうが実態に合いますし、コンテンツ起点のビジネスモデルではDECAXのほうが施策の整理に向く場合があります。AISASは万能ではなく、消費者の購買プロセスに『検索』と『共有』が明確に組み込まれる商材で特に力を発揮するフレームワークです。自社の商材特性を踏まえ、AISAS・AIDMA・AISCEAS・DECAX・5Aといった複数モデルを使い分け、場合によっては併用する柔軟さが、フレームワーク依存ではなく実態起点のマーケティング設計を可能にします。

6つ目は、AISASを『古い』『SNSやAI時代には合わない』と切り捨て、フレームワーク自体を活用しないことです。近年は『AISCEAS』『5A』『SIPSモデル(共感→確認→参加→共有拡散)』など、SNS時代を反映した派生モデルも登場していますが、AISASが提示した『Search』と『Share』を消費行動に組み込む基本思想は、現代でも色褪せていません。フレームワークの新旧や流行に過度に振り回されず、自社の事業文脈に応じてAISASを核に据えながら、必要に応じて派生モデルの要素を組み込む『フレームワークの実務的な使い方』こそが、現場で成果を生むアプローチです。

まとめ

AISASとは、Attention・Interest・Search・Action・Shareの5段階で消費行動を捉えるマーケティングモデルのことで、AIDMAがマス広告時代の心理プロセスを描いたのに対し、AISASは消費者が能動的に検索し購入後に発信するデジタル時代の購買行動を行動プロセスとして体系化したフレームワークです。AISCEAS・DECAX・5Aといった発展モデルとの役割を区別し、商材特性と接点構造に応じて使い分けることが、現代マーケティング設計の実務的な前提条件となります。

AISASの真価は、消費者の実際の購買プロセスに沿った施策の整理・部門横断での共通言語化・Share段階を組み込んだ持続的な成長エンジンの構築という3つの側面で、Attention段階の認知獲得・Interest段階の関心喚起・Search段階の検索と比較対応・Action段階の転換設計・Share段階の推奨循環という5フェーズ別の施策設計を地道に積み上げ、BtoCの統合マーケティング・BtoBの導入検討プロセス・商品開発への適用といった文脈で活用することで、現代マーケティング部門の戦略起点として機能する点にあります。フェーズ独立の設計・上流偏重・Search段階の情報環境放置・Share軽視・商材特性無視・フレームワーク自体の軽視という6つの落とし穴を避け、AISASを核に据えながら派生モデルの要素も柔軟に取り込むことで、AISASは長期にわたって認知から推奨までを一気通貫で設計する、現代マーケティングの中核的な経営活動として機能し続けます。

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