業務フローとは?可視化の手順と、属人化を解消する進め方
その人が休むと止まる仕事が、どのチームにもいくつかあります。引き継ぎをしようとしても、本人も手順を全部は説明できない。この状態を解消するのが業務フローの可視化です。この記事では、業務フローとは何を書いたものなのか、作る手順、そして作ったあとに形骸化させないための運用までを解説します。
業務フローとは|仕事の進め方を図にしたもの
業務フローとは、ある仕事が始まってから終わるまでの進め方を、順番と担当が分かる形で図にしたものです。見れば、その仕事をやったことのない人でも全体の流れを追える状態を目指します。
マニュアルとは役割が違います。マニュアルは「この作業をどうやるか」を詳しく書くもので、業務フローは「作業と作業がどうつながっているか」を示すものです。両方必要な場面もありますが、先に作るべきはフローです。全体の流れが見えていないと、どの作業のマニュアルが必要かも判断できません。
何のために作るのか
目的によって、書くべき粒度が変わります。先に決めてください。
- 引き継ぎのため:担当者が変わっても回る状態をつくる。例外処理まで書く必要がある
- 改善のため:無駄や手戻りの発生箇所を見つける。待ち時間と手作業を明示する
- システム化のため:要件を伝える土台にする。データのやり取りを正確に書く
目的を決めずに「とりあえず可視化しよう」と始めると、どこまで細かく書くかの基準がなく、途中で手が止まります。
属人化はどこで生まれるか
属人化は、本人が情報を囲い込んでいるから起きるわけではありません。多くは、書き残す場面がないまま仕事が回り続けた結果です。
具体的には、次の3つが重なったときに定着します。
- 例外処理が多い:「この取引先だけ手順が違う」が積み上がると、正規の手順を知っていても実務が回らなくなります
- 判断が入っている:「金額が大きいときは上に確認する」の基準が本人の頭の中にしかない状態です
- 外部とのやり取りがある:誰に連絡すれば良いか、どこまで話を通してあるかが、履歴として残っていない
この3つは、いずれも図にしないと消えません。逆に言えば、可視化するときにこの3つを意識して拾いにいけば、属人化のかなりの部分は解消できます。
可視化の手順|5ステップ
STEP1:対象を一つに絞る
部署の業務全体を一度に図にしようとすると、まず終わりません。最初は一つの業務に絞ってください。
選ぶ基準は、「止まったときの影響が大きい」かつ「担当が一人しかいない」ものです。月次の請求処理、問い合わせの一次対応、広告の入稿作業など、具体的な単位で選びます。
範囲を決めるときは、始まりと終わりを先に言語化してください。「申込フォームが送信されたところから、初回返信を送るまで」のように区切ると、図が膨らみません。
STEP2:担当者に時系列で聞く
ここが最も重要な工程です。やっている本人に、実際の順番で話してもらいます。
聞き方にコツがあります。「どうやっていますか」と聞くと、概要しか返ってきません。「最初に何を見ますか」「その次は」と、実際の操作をなぞる形で聞いてください。可能なら、画面を見せてもらいながら聞くのが確実です。
もう1つ、必ず聞くべき質問があります。「この通りにいかないことはありますか」です。例外処理は、聞かれなければ本人からは出てこない情報です。本人にとっては当たり前すぎて、手順だと認識されていないからです。
STEP3:付箋で並べてから図にする
いきなりツールで描かないでください。聞いた作業を1つずつ付箋に書いて並べ、順番を入れ替えながら整理するほうが早く進みます。最初に清書すると、修正の手間が惜しくなって構造の見直しをしなくなります。
図にする段階では、担当者ごとに行を分けて並べてください。自社の担当A、担当B、他部署、外部パートナー、顧客。こうすると、作業が人をまたぐ地点が一目で分かります。属人化も遅延も、たいていこの乗り換え地点で発生します。
STEP4:別の人に読んでもらう
描いた本人は、抜けている部分に気づけません。完成したら、その業務を知らない人に読んでもらってください。
確認するのは、「この図だけを見て作業を進められるか」です。読んだ人が質問した箇所が、そのまま図の欠落です。特に多いのは、判断基準と、連絡先と、失敗したときの戻り方の3つです。
STEP5:更新のタイミングを決める
業務フローは、作った瞬間から古くなり始めます。手順が変わったときに直すルールがないと、1年で使えない図になります。
現実的なのは、見直す機会を業務の中に組み込むことです。新しいメンバーが入ったとき、ツールを入れ替えたとき、半年に一度の棚卸し。このいずれかを決めておけば、放置される期間が短くなります。
図に入れるべき情報
作業を並べるだけの図は、引き継ぎには使えません。次の情報が入っているかを確認してください。
- 誰がやるか:部署名ではなく、役割単位で書く。「営業部」ではなく「担当営業」
- 何を使うか:システム名、ファイルの場所、使うテンプレート
- 判断基準:分岐する場所で、何を見てどちらを選ぶのか
- 待ち時間:相手の返答を待つ箇所と、目安の日数
- 例外とその扱い:手順が違うケースと、そのときどうするか
- 問い合わせ先:詰まったときに誰に聞けばよいか
このうち3番目・5番目・6番目が、先に挙げた属人化の3つの原因に直接対応します。図の中に入れづらければ、別紙の補足として添えても構いません。重要なのは、図と同じ場所にあることです。
作ったあとにやること
可視化は目的ではなく、手段です。図を作って満足してしまうと、属人化は何も変わりません。
例外を減らす
図にしてみると、例外処理の多さに驚くことがあります。すべてが必要なものとは限りません。「過去の経緯でそうなっているだけ」の例外は、相手に確認して標準の手順に戻せることがあります。
判断基準を文章にする
「金額が大きい場合は上司に確認」では、引き継いだ人は判断できません。「50万円以上の場合は部長に承認を得る」のように、数量と対象を入れてください。属人化の大半は、この基準の言語化で解消します。
手作業の集中地点を見る
図の中で手作業が連続している箇所は、自動化やツール化の候補です。ただし、ここでもすぐにツール導入に走らないでください。順序を入れ替えるだけで無駄が消えることもあります。
よくある質問
Q. 担当者が協力的ではありません
可視化は「あなたがいなくても回るようにする」取り組みなので、自分の存在価値を下げられると受け取られることがあります。目的を先に伝えてください。休めるようにする、問い合わせを減らす、他の仕事に時間を使えるようにする。これらは本人の利益でもあります。
Q. どの程度の粒度で書けばよいですか
引き継ぎが目的なら、「その作業をしたことがない人が迷わない」が基準です。改善が目的なら、もっと粗くても構いません。ただしどちらの場合も、1枚に収まらないなら、業務の切り方が大きすぎます。
Q. 作ったものの誰も見ません
見る場面がない図は、必ず放置されます。新人のオンボーディングで使う、休暇前の引き継ぎに使う、改善の検討で使う。使い道を先に決めてから作ると、粒度の判断もしやすくなります。
Q. 全業務を可視化するべきですか
必要ありません。手順が安定していて、誰がやっても同じ結果になる作業は、図にする価値が小さいです。優先すべきは、止まったときの影響が大きく、かつ担当が限られている業務です。
図だけでは解消しない属人化
業務フローで解消できるのは、手順の属人化です。もう1つ、進行中の案件の状況が本人の頭の中にしかない、という別の属人化があります。こちらは図ではなく、日々の記録で解消するものです。
特に複数の施策を並行している場合、進捗も予算も担当者の手元にしかない状態になりがちです。Xtrategyでは、施策のスケジュールと予算・KPIを同一画面で管理し、複数の施策を横断して状況を確認できます。
まとめ
- 業務フローは作業のつながりを示す図。マニュアルより先に作る
- 目的(引き継ぎ・改善・システム化)を先に決める。粒度は目的で変わる
- 属人化の原因は、例外処理・判断基準・外部とのやり取りの3つ
- ヒアリングでは「この通りにいかないことはありますか」を必ず聞く
- 完成したら、その業務を知らない人に読んでもらって検証する
- 更新のタイミングを決めないと、1年で使えなくなる
属人化の解消は、図を作った時点ではなく、判断基準を言語化した時点で進みます。まずは一つの業務に絞って、本人に「この通りにいかないことはありますか」と聞いてみるところから始めてみてください。