EVM(アーンドバリューマネジメント)とは?6つの指標の読み方と使いどころ
進捗率は70%、予算消化は60%。この2つの数字を並べても、このプロジェクトが順調なのか危ないのかは判断できません。進捗とコストを同じ尺度に乗せて初めて、両方を一つの判断につなげられます。これを行うのがEVMです。この記事では、6つの指標の意味と読み方、そして使いどころを整理します。
EVMとは|進捗を金額に換算して比べる手法
EVM(Earned Value Management、アーンドバリューマネジメント)は、プロジェクトの進捗とコストを同じ単位で扱い、計画との差を測る手法です。単位には金額を使うのが一般的ですが、人日や工数でも成立します。
発想の根にあるのは、「終わった作業には、その分の価値がある」という考え方です。100万円の作業のうち半分が終わっていれば、50万円分の価値を稼いだと数えます。この「稼いだ価値」を基準に、計画・実績を並べて見るのがEVMです。
なぜ進捗率だけでは足りないのか
進捗率は、作業がどこまで進んだかしか表しません。予定より人手をかけて進めているのか、少ない工数で進んでいるのかは分かりません。
逆に予算消化率だけを見ても、使った金額に見合う作業が終わっているのか判断できません。予算の6割を使ったという事実は、順調の証拠にも危険の兆候にもなります。
この2つを別々に見ている限り、判断は感覚になります。同じ単位に揃えることで、初めて引き算や割り算ができるようになります。
基本の3指標
まず、測定する3つの値です。これらがすべての土台になります。
1. PV(計画価値)
Planned Value。基準日時点で、計画上どれだけの作業が終わっているはずかを金額で表した値です。
総額1,000万円のプロジェクトで、今日時点で全体の4割が終わっている計画なら、PVは400万円です。実態とは無関係に、計画を立てた時点で決まる値です。
2. EV(出来高、達成価値)
Earned Value。EVMの中心にある値です。実際に終わった作業を、計画時の金額で換算したものを指します。
同じ例で、実際には全体の3割しか終わっていないなら、EVは300万円です。ここで重要なのは、実際に使った金額ではなく、計画時の単価で換算する点です。何人でやっても、終わった作業の価値は変わりません。
3. AC(実コスト)
Actual Cost。基準日までに実際にかかった費用です。外注費だけでなく、自社メンバーの工数を金額に換算した分も含めます。
外部への支払いだけをACとしてしまうと、自社の人件費が見えなくなり、実態より優秀な数字が出ます。ここは注意が必要な点です。
差異を見る2指標
基本の3つから引き算で導く指標です。金額としてのズレ幅が分かります。
4. SV(スケジュール差異)
SV = EV − PV
計画では400万円分終わっているはずなのに、実際は300万円分。SVはマイナス100万円となり、遅れていることを示します。プラスなら前倒しです。
読み方の注意点が1つあります。SVは金額で出ますが、意味するのはスケジュールの遅れです。「100万円の損失が出ている」ではなく、「100万円分の作業が遅れている」と読みます。
5. CV(コスト差異)
CV = EV − AC
300万円分の作業を終わらせるのに、実際には350万円かかっている場合、CVはマイナス50万円です。こちらはそのままコスト超過を意味します。
予算消化率では見えないものが、ここで見えます。使った金額を、稼いだ価値と直接比べているからです。
6. 効率指数(SPI・CPI)
差異を金額ではなく比率で見る指標です。2つセットで使います。
SPI = EV ÷ PV(スケジュール効率指数)
CPI = EV ÷ AC(コスト効率指数)
どちらも1.0が計画どおり。1.0を下回れば問題あり、1.0を上回れば予定より良い状態です。先の例ならSPIは0.75、CPIは約0.86です。
金額ではなく比率で見る利点は、規模の違うプロジェクトを並べて比べられることです。1億円の案件の100万円超過と、500万円の案件の100万円超過は意味が違いますが、CPIなら同じ尺度で比較できます。
目安として、0.9を下回ったら対応を検討、0.8を下回ったら計画の見直しを検討する、といった基準を先に決めておくと、数字を見たときの行動が定まります。
4つの組み合わせで状況を読む
EVMの価値は、個々の指標よりも組み合わせにあります。SPIとCPIの組み合わせで、4つの状態に分けられます。
- SPI高・CPI高:順調です。ただし、見積もりが過大だった可能性もあります
- SPI低・CPI高:遅れているがコストは抑えられている。人手が足りていない可能性が高い状態です
- SPI高・CPI低:進んではいるがコストをかけすぎている。残業や増員で進捗を維持している型です
- SPI低・CPI低:遅れていてコストも超過。計画そのものの見直しが必要な状態です
実務で判断を間違えやすいのは2番目と3番目です。どちらも片方の数字だけ見れば良い状態に見えます。両方を並べて初めて、人手不足なのか過剰投入なのかが見分けられます。
EVMが機能する条件
便利な手法ですが、前提が崩れると数字が意味をなさなくなります。
作業が金額に分解されていること
最大の前提です。各作業にいくら割り当てるのかが決まっていなければ、PVもEVも計算できません。作業を洗い出し、それぞれに工数と単価を置く作業が、導入の下準備になります。
完了の判定が客観的なこと
EVは、終わった作業を数えて算出します。担当者が感覚で「たぶん終わってる」と報告していると、EVも感覚の数字になります。
対策として、進捗の段階を絞る方法があります。0%か100%の2段階にする、あるいは着手時に50%、完了で100%とする、といったルールです。中途半端な数字を入れさせないことで、主観を排除できます。
実コストが集まること
ACには自社メンバーの工数も含める必要があります。工数の記録が取れていなければ、CVもCPIも算出できません。EVMを導入するなら、工数の記録が前提条件になります。
使いどころと、向かない場面
向いている場面
- 規模が大きく、期間が長いプロジェクト
- 外注費が大きく、コスト管理が重要な案件
- 複数のプロジェクトを横断して比べたい場合
- 発注者や経営層に、数字で状況を説明する必要がある場合
向かない場面
- 数週間で終わる小規模な案件。仕込みの手間が効果を上回ります
- 作業内容が進行中に大きく変わるプロジェクト。計画値が前提なので、前提が崩れると比較が成立しません
- 成果物が数えられない仕事。何をもって完了とするかが定められないとEVが出せません
小さく始める方法
全部を一度に導入する必要はありません。まずSPIだけ、つまりEV÷PVだけを見るところから始めても十分です。金額でなく人日で換算すれば、単価を決める工程も省けます。
これだけでも、「進捗率は70%です」という報告に対して、「計画では今週末に80%のはずだから、遅れている」という判断ができるようになります。
よくある質問
Q. 予実管理とはどう違いますか
予実管理は予算と実績の2つを比べますが、EVMはそこに「稼いだ価値」を加えて、3つを比べます。この1つが加わることで、使った金額が適切かどうかを進捗と紐づけて判断できるようになります。
Q. マーケティング施策でも使えますか
制作物が明確な施策なら使えます。サイト制作、動画制作、展示会出展など、作業を洗い出せるものが向いています。逆に、広告運用のような継続的な業務には向きません。終わりがない仕事には、完了の定義が置けないからです。
Q. SPIが1.0を超えていれば安心ですか
必ずしもそうではありません。着手しやすい作業から進めているだけで、難しい作業が後半に残っている可能性があります。また、プロジェクト終盤には定義上SPIが1.0に近づいていくため、終わり間際の数字は遅れを見つけにくくなります。
Q. どの頻度で見ればよいですか
週次が目安です。月次だと発見が遅く、日次だと数字の振れ幅が大きすぎて判断できません。定例のタイミングに合わせて集計するのが現実的です。
表計算ソフトでの限界
EVMの計算式自体は単純なので、表計算ソフトでも組めます。問題は、入力元となるデータが分散していることです。計画はスケジュール表、進捗はタスク管理表、実コストは工数シートと経理のファイル。これらを毎週集めて集計する手間が、途中で途切れる原因になります。
Xtrategyでは、施策のスケジュールと予算・KPIを同一画面で管理できるため、計画と実績を並べて確認する作業に転記が不要になります。
まとめ
- EVMは進捗とコストを同じ単位に揃えて、計画との差を測る手法
- 基本は3つ。PV(計画)、EV(出来高)、AC(実コスト)
- SV=EV−PVは遅れ、CV=EV−ACはコスト超過を金額で示す
- SPI・CPIは比率。規模の違う案件を横断して比べられる
- SPIとCPIの組み合わせ4パターンで、人手不足か過剰投入かを見分ける
- 進捗率が主観だとEVも主観になる。0%・50%・100%など段階を絞る
EVMは全部を揃えてから始める必要はありません。まずはEV÷PV、つまり「今週末に終わっているはずの量」と「実際に終わった量」を並べるところから始めてみてください。進捗率だけを眺めていたときには見えなかった遅れが、数字として現れます。