フローチャート記号一覧|それぞれの意味と正しい使い分け
フローチャートを描いていて、四角とひし形以外の記号をどう使えばいいか分からなくなる。あるいは、人によって記号の使い方がばらばらで、図を読むたびに解釈が必要になる。記号にはそれぞれ決まった意味があり、正しく使い分ければ図は説明なしで伝わります。この記事では、実務で使う記号を出現頻度の高い順に整理し、それぞれの意味と間違えやすい点をまとめます。
フローチャートの記号には規格がある
フローチャートの記号は、感覚で選ぶものではありません。日本ではJIS X 0121(情報処理用流れ図・プログラム網図・システム資源図記号)という規格で、記号の形状とその用法が定められています。この規格は国際規格ISO 5807に対応しており、ExcelやPowerPointの図形ライブラリ、各種の作図ツールが備えている記号も、基本的にこれに準拠しています。
つまり一度覚えれば、ツールが変わっても、読み手が変わっても通用します。逆に言えば、規格から外れた使い方をすると、読み手は必ずどこかで引っかかります。
ただし、実務で必要な記号はそれほど多くありません。以下では、使用頻度の高い4つの基本記号から順に解説します。この4つを正しく使えれば、読みやすい図の土台はできます。
まず覚えるべき4つの基本記号
1. 端子(角丸四角形/楕円)
フローの入口と出口を表す記号です。角を丸めた四角形、または楕円で描き、中には「開始」「終了」と書くか、「注文を受領する」「出荷が完了する」のように起点と終点の事象を書きます。
開始は必ず1つです。終了は分岐の結果に応じて複数あって構いません。「承認された場合」と「差し戻された場合」で終わり方が違うなら、終了の端子は2つになります。
間違えやすい点:端子を省略した図をよく見かけますが、どこから読み始めるかが分からなくなります。1枚に収まらず図を分割する場合も、各ページの先頭と末尾に端子を置いてください。
2. 処理(長方形)
何らかの作業や演算を行うことを表す、最も使用頻度の高い記号です。ただの長方形で描きます。「在庫を引き当てる」「合計金額を計算する」のように、動詞で終える形で書くのが原則です。
1つの処理には1つの動作だけを入れます。「確認して登録する」のように2つ入っている場合は、分けるべきサインです。分けておくと、後から「確認だけ別の担当に移す」といった変更にも対応できます。
間違えやすい点:迷ったら何でも長方形にしてしまいがちです。特に「入力する」「出力する」は入出力記号、「判断する」はひし形が正しい記号です。全部を長方形で描いた図は、動いてはいますが情報量が落ちます。
3. 判断(ひし形)
条件によって流れが分かれる箇所を表します。ひし形で描き、中には「在庫はあるか」「金額は10万円以上か」のように、答えが分かれる問いの形で書きます。
出ていく線には必ずラベルを付けます。「はい/いいえ」「Yes/No」でも構いませんし、3つ以上に分かれる場合は「1万円未満/1万円以上10万円未満/10万円以上」のように条件そのものを書きます。ラベルのない分岐は、読み手がどちらがどちらか判断できません。
間違えやすい点:分岐の条件に漏れがあるケースが最も多い失敗です。「10万円以上か」で分けたつもりが、ちょうど10万円のときにどちらへ進むか決まっていない、という類です。境界値を含むかどうかを明記してください。また、分岐した線が最終的にどこかで合流するのか、それぞれ別の終端に向かうのかも、必ず描き切ってください。
4. 線と矢印
記号ではありませんが、図の読みやすさを最も左右する要素です。流れは上から下、左から右が原則です。この向きに沿っている限り、矢印はなくても読めます。逆行する場合、つまり下から上や右から左へ戻る場合は、必ず矢印を付けてください。
線が交差すると読み違いが起きます。交差が増えてきたら、記号の配置を見直すか、後述の結合子を使って線を切ってください。
実務でよく使う記号
基本の4つに加えて、以下の記号を覚えておくと表現の幅が広がります。
データ(平行四辺形)
入力または出力を表します。媒体を特定しない汎用の記号です。「申込書を受け取る」「請求データを出力する」のように、情報が外から入ってくる、あるいは外へ出ていく箇所に使います。処理との違いは、内部で何かを加工するのではなく、やり取りそのものを表す点です。
書類(下辺が波形の長方形)
紙の書類を表します。下の辺が波打った長方形で描きます。「見積書を発行する」「納品書を印刷する」など、紙という媒体が明確な場合に使うと、電子データとの区別が一目で付きます。業務フローを描くときに有用な記号です。
定義済み処理(両側に縦線の入った長方形)
別のフローチャートで詳細を定義してある処理を表します。長方形の左右に縦線を入れた形です。「与信審査を行う」のように、それ自体が複数の手順を含む場合、この記号にして詳細は別図に切り出します。
1枚のフローチャートが縦に長くなりすぎたとき、最初に検討すべきなのがこの記号です。詳細を別図に逃がすことで、全体の見通しが戻ります。
結合子(小さい円)
同じページ内で、離れた場所へ流れをつなぐ記号です。小さい円の中にAやBといった記号を書き、対応する箇所に同じ記号の円を置きます。線を引くと交差してしまう場合に使います。
ページをまたぐ場合は、外部結合子(下向きの五角形のような形)を使います。こちらには接続先のページ番号を書きます。
間違えやすい点:便利な記号ですが、多用すると図が追えなくなります。1枚あたり2〜3組までが目安です。それ以上必要になるのは、図を分割すべきというサインです。
ループ端(上下が台形状の記号)
繰り返し処理の始まりと終わりを表す、対で使う記号です。「全件処理するまで」のような繰り返し条件を、開始側か終了側のどちらかに書きます。
ひし形と線を戻す形でも繰り返しは表現できますが、ループ端を使ったほうが「ここは繰り返し」と一目で分かります。件数の多い処理を描くときに効きます。
手作業(下辺が短い台形)
人が手で行う作業を表します。システム化された処理と人手の作業が混在する業務フローで使うと、どこが自動でどこが手作業かが明確になります。業務改善の検討では、この記号が並んでいる箇所が着手候補になります。
使い分けで迷いやすい3つの組み合わせ
処理と定義済み処理
判断基準は、別の図が存在するかどうかです。存在するなら定義済み処理、この図の中で完結するなら処理を使います。「詳しく書くと長いから」という理由で定義済み処理にして、実際には別図を作っていない状態が最も避けたい形です。読み手は存在しない図を探すことになります。
データと書類
媒体が紙だと確定していれば書類、それ以外や媒体を問わない場合はデータを使います。ただし業務フローでこの2つを混在させる場合は、図の中で基準を統一してください。同じ請求書が、ある箇所では書類、別の箇所ではデータで描かれていると、読み手は「何か違いがあるのか」と考え込みます。
判断とループ端
1回だけの条件分岐は判断、繰り返しはループ端です。判断で線を上に戻す描き方も間違いではありませんが、繰り返しの回数が多い処理では、ループ端のほうが構造が伝わります。
読みやすいフローチャートにする4つのルール
記号を正しく使っていても、次の点が守られていないと読みにくい図になります。
- 粒度を揃える:1つの図の中で、「ボタンを押す」と「与信審査を行う」が並んでいると読みにくくなります。細かすぎる処理はまとめ、大きすぎる処理は定義済み処理にして別図へ切り出します
- 1枚に収める:A4またはスライド1枚に収まる分量が上限です。収まらないなら分割すべき状態です。記号の数でいえば15〜20個が目安になります
- 主流を真ん中に通す:正常に進んだ場合の流れを図の中央に縦一列で置き、例外処理は左右に逃がします。こうすると「普通はこう進む」が一目で分かります
- 誰がやるかを示す:業務フローの場合、担当者ごとに縦または横のレーンを分けて描くと、引き継ぎの箇所が可視化されます。処理の記号だけを並べても、誰の作業かは伝わりません
よくある質問
Q. 記号を厳密に使い分ける必要はありますか
社内の打ち合わせで使う程度なら、端子・処理・判断の3つだけでも十分に機能します。厳密さが要るのは、外部に提出する資料や、システム開発の要件を伝える図です。読み手が図だけを見て判断する場面では、記号の意味が共通言語として効いてきます。
Q. ExcelやPowerPointで作れますか
作れます。図形の挿入メニューにフローチャート用の記号がまとまっており、名称もJISの用語に沿っています。ただし記号を1つ足すたびに線を引き直す手間があるため、頻繁に更新する図には向きません。更新が続く業務フローは、専用の作図ツールを検討する価値があります。
Q. 分岐が多くて図が複雑になります
分岐が5つ以上ある場合、フローチャートが最適な表現ではない可能性があります。条件と結果の対応を表にまとめた決定表のほうが、漏れなく整理できることがあります。フローチャートは「順番に進む流れ」を表すのに向いた図で、条件の組み合わせを網羅する用途には別の道具が適しています。
Q. 手書きでも構いませんか
検討段階ではむしろ手書きを勧めます。清書は流れが固まってからで十分です。最初からツールで清書すると、修正の手間が惜しくなって構造の見直しをしなくなります。
図を描いたあとに残る仕事
フローチャートが表せるのは、処理の順番と分岐です。誰がいつまでにやるか、全体としていつ終わるかは表せません。業務フローを描いて手順が固まったら、次はそれを日程と担当に落とす作業が残ります。
施策の実行フローを設計したあと、スケジュールと予算・成果を紐づけて管理する段階では、図だけでは追いきれなくなります。Xtrategyでは、施策のスケジュールと予算・KPIを同一画面で管理できます。
まとめ
- 記号はJIS X 0121で定められており、ExcelやPowerPointの図形もこれに準拠している
- まず覚えるのは端子・処理・判断の3つと、線の向き。これで土台はできる
- 処理は1つの動作だけ。判断は問いの形で書き、出ていく線にラベルを付ける
- 図が長くなったら定義済み処理で別図に切り出す。結合子は1枚に2〜3組まで
- 粒度を揃え、主流を中央に通し、担当者をレーンで分ける
- 分岐が5つ以上なら、フローチャート以外の表現も検討する
記号の使い分けは、覚えることが目的ではありません。図を見た人が説明なしで理解できる状態を作るための共通ルールです。まずは端子・処理・判断の3つを正確に使うところから始めてみてください。