見やすい工程表の作り方|イナズマ線で進捗遅れを一目で示す
工程表を作って共有しているのに、定例では結局「あの件どうですか」と一件ずつ聞いている。この状態は、工程表に予定しか書かれていないことが原因です。予定と実績の差が図の上に現れていなければ、遅れているかどうかは読み取れません。この記事では、進捗の遅れを一本の折れ線で示すイナズマ線を中心に、見やすい工程表の作り方を解説します。
工程表が見づらいのは、情報が足りないから
見づらい工程表の多くは、装飾が足りないのではなく、読み取れる情報が足りていません。色を増やしても罫線を引いても、判断に必要な情報がなければ見やすくはなりません。
工程表を見る人が知りたいのは、次の3つです。
- 今日時点で、予定どおり進んでいるのか
- 遅れているなら、どの工程がどれだけ遅れているのか
- その遅れは、後続に影響するのか
予定のバーを並べただけの工程表は、1つ目にすら答えられません。進捗率の列を足しても、数字を一行ずつ読んで頭の中で比較する作業が必要になります。図なのに読み解く手間がかかるというのは、図として機能していない状態です。
この問題を一本の線で解決するのがイナズマ線です。
イナズマ線とは
イナズマ線は、基準日時点での各工程の進捗位置を、上から下へ順に結んだ折れ線です。遅れている工程では左側に、進んでいる工程では右側に点が振れるため、線が稲妻のようにギザギザとした形になります。これが名前の由来です。
建設業や製造業の工程管理で古くから使われてきた手法ですが、複数の作業が並行するプロジェクトなら、業種を問わず使えます。
線の形で分かること
イナズマ線の価値は、数字を読まなくても状況が分かる点にあります。
- ほぼ真っ直ぐ:全体が予定どおり。問題なし
- 一部だけ左に大きく飛び出している:その工程だけが遅れている。原因はその行にある
- 全体が左に寄っている:計画そのものに無理があった可能性が高い
- 上は右、下は左に山形になっている:先行工程は進んでいるが後工程が着手できていない。引き継ぎで止まっている兆候
特に4つ目は、進捗率の数字を並べただけでは気づきにくいパターンです。形として見えるから分かります。
イナズマ線の引き方|5ステップ
STEP1:基準日を決めて縦線を引く
いつ時点の状況を示すかを先に決めます。通常は定例の前日か当日です。その日付の位置に、上から下まで縦線を引きます。この線が、すべての判断の基準になります。
STEP2:各工程の予定進捗位置を確認する
基準日の縦線が、その行のバーのどこを通っているかを見ます。バーの半分の位置を通っていれば、その工程の予定進捗は50%です。まだバーが始まっていなければ0%、すでに終わっていれば100%となります。
STEP3:実績の進捗位置に点を打つ
各工程の実際の進捗率を、バー上の位置に換算して点を打ちます。実績60%なら、その行のバーの左端から6割の位置です。ここで重要なのは、日付ではなくバーの長さに対する割合で位置を取ることです。
未着手の工程は、バーの左端に点を置きます。完了した工程は右端です。
STEP4:点を上から順に結ぶ
基準日の縦線の上端から始めて、各行の点を順に直線で結び、最後に縦線の下端に戻ります。これでイナズマ線が完成です。
色は赤かオレンジなど、バーとははっきり違う色にします。線は太めにすると、離れた位置からでも形が読み取れます。
STEP5:前回の線を残す
見落とされがちですが、前回引いた線を薄い色で残しておくと、情報量が大きく変わります。前週より左に後退していれば、遅れが拡大しているということです。
1本だけだと「今遅れている」しか分かりませんが、2〜3本並べると「遅れが埋まりつつあるのか、広がっているのか」が見えます。この差は、対策を打つかどうかの判断に直結します。
Excel・スプレッドシートでの引き方
方法A:図形で手引きする
挿入メニューから折れ線の図形を選び、セルの上に直接引く方法です。最も手っ取り早く、工程数が20行程度までなら1回あたり数分で済みます。
欠点は、進捗率を更新しても線は自動で動かないことです。毎回引き直す前提で運用してください。逆に言えば、週に1回しか更新しないならこの方法で十分です。
方法B:散布図を重ねる
進捗率から座標を計算し、散布図(直線で結んだタイプ)として工程表に重ねる方法です。X座標は「バーの開始位置+バーの長さ×進捗率」、Y座標は行番号に対応させます。
一度仕込めば進捗率を更新するだけで線が動きますが、初回の設定には相応の手間がかかります。工程数が多い、あるいは長期にわたって使い続ける工程表なら、こちらが向いています。
どちらを選ぶか
最初は方法Aで始めてください。イナズマ線を引く運用が定着するかどうかが先で、自動化はその後で間に合います。仕組みを作り込んだものの、結局進捗率が入力されなくなった、というのがよくある失敗です。
イナズマ線が機能しない条件
便利な手法ですが、前提が崩れると意味をなさなくなります。
進捗率が主観で入っている
最も多い失敗です。担当者が感覚で「70%くらい」と入力しているなら、それを結んだ線も感覚の図になります。イナズマ線を導入するなら、進捗率の決め方を先に揃えてください。
実務で使えるのは、成果物の数で数える方法です。「全30ページ中18ページ完了で、60%」のように、数えられるものを分母にすれば、人によって値が変わりません。数えられない作業は、0%・50%・100%の3段階だけにする方法もあります。
工程の行数が多すぎる
50行を超えると、線が細かく振れすぎて形を読み取れなくなります。報告用には大工程にまとめた版を別に作り、10〜15行程度に集約してから線を引いてください。詳細の工程表と報告用の工程表は、分けても構いません。
待ち時間が混ざっている
先方の確認待ちで止まっている工程を、こちらの遅れと同じ形で描くと、対策を間違えます。待ちの行は別の色で点を打つか、行の背景色を変えるなどして、自分たちが遅れているのか相手待ちなのかを区別できるようにしてください。
イナズマ線以外で見やすさを上げる
線を引く前に、土台となる工程表自体が読める状態になっている必要があります。特に効果の大きいのは次の3点です。
- 今日の縦線を常に出す:イナズマ線を引かない週でも、基準日の線だけは常に表示しておきます。これがないと、バーを見ても今がどこなのか分かりません
- 色を3色以内にする:工程ごとに色を変えたくなりますが、色が増えるほど意味を覚えられなくなります。予定・実績・遅延の3色で十分です
- 行の順番を時系列にする:担当者別や分類別で並べると、バーが上下に散らばって全体の流れが見えなくなります。開始日の早い順に並べると、バーが左上から右下へ流れる形になり、イナズマ線の形も読みやすくなります
運用のルール
イナズマ線は、引くタイミングを固定して初めて機能します。週次定例があるなら、その前日に引き直すと決めてください。「必要なときに」では、忙しい週に必ず飛びます。
定例では、線が左に飛び出している行だけを扱います。全行を順に確認する必要はありません。この進め方にすると、報告の時間が短くなるだけでなく、議論が問題のある箇所に集中します。
もう1つ、遅れを見つけたときの行動を先に決めておいてください。見えるだけでは何も変わりません。期日を動かす、範囲を削る、人を足す。このどれを誰が決めるのかまで含めて決めておくと、イナズマ線は報告資料ではなく意思決定の道具になります。
表計算ソフトでの限界
イナズマ線は、進捗率が正しく入力されていることが前提です。ところが表計算ソフトでは、進捗率の更新を人の規律に頼るしかありません。入力が途切れた週は、線を引いても実態を表しません。
また、複数の施策や案件を並行している場合、工程表が案件ごとに分かれていると、全体としてどこが危ういのかは見えません。Xtrategyでは、施策のスケジュールと予算・KPIを同一画面で管理し、複数の施策を横断して進捗を確認できます。
まとめ
- 工程表が見づらいのは装飾の問題ではなく、予定と実績の差が図上にないから
- イナズマ線は基準日の縦線と各行の進捗位置を結んだ折れ線。左に飛び出たら遅れ
- 前回の線を薄く残すと、遅れが拡大しているか埋まりつつあるかが分かる
- 進捗率が主観だと線も主観になる。成果物の数で数えるか、3段階に絞る
- 報告用は10〜15行に集約する。50行を超えると形が読めない
- 引くタイミングと、遅れを見つけたときの行動を先に決めておく
イナズマ線は、特別なツールがなくても今週から始められます。まずは基準日の縦線を引いて、手で一本結んでみてください。数字を並べていたときには見えなかった偏りが、形として見えてくるはずです。