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LTVとCACの関係|比率・回収期間・資金繰りで獲得投資を判断する

与謝秀作

LTVとCACの違い・関係性|ユニットエコノミクスの見方

LTV/CACは顧客価値と獲得費の比率で、投資判断には回収期間と資金余力も必要です。将来の粗利が獲得費を上回る予測でも、回収までに現金が尽きたり、予測より早く顧客が離れたりすれば判断は変わります。「3倍以上だから健全」と一律に決めず、定義・実績・時間をそろえて確認しましょう。

ユニットエコノミクスは単一の比率ではない

ユニットエコノミクスは、顧客や取引など1単位の採算を分析する考え方です。LTV/CACはそのための指標の一つであり、粗利貢献、維持に必要な費用、回収速度、追加獲得の採算も対象になります。

指標

この本文での定義

単独では分からないこと

粗利LTV

獲得費控除前の将来粗利の予測

会社の最終利益・入金時点

CAC

採用した獲得費用÷一意新規顧客

将来の顧客価値

LTV/CAC

予測粗利LTV÷CAC

回収速度・固定費・追加投資の限界

単純回収月数

CAC÷一定の月間粗利

解約を反映した実際のコホート回収や現金回収

Stripeの顧客生涯価値の解説では、顧客価値に影響する要素として継続や粗利等を扱っています。売上LTVを利益と呼んだり、獲得費を引いた値からもう一度CACを控除したりしないでください。維持費を含めるなら、原価と重複していないかも確認します。

架空例:同じ2.78倍でも回収速度が違う

次は月間粗利3,500円が一定の架空サービスです。0より大きい月次顧客チャーンを一定と仮定し、予測粗利LTVを「月間粗利÷月次チャーン」で試算します。拡張・縮小、追加維持費、割引率は省略し、獲得費はLTVから控除しません。

架空ケース

月次チャーン

CAC

予測粗利LTV

LTV/CAC

単純回収月数

A

3%

42,000円

約116,667円

約2.78倍

12か月

B

1.5%

84,000円

約233,333円

約2.78倍

24か月

Aは3,500÷0.03÷42,000、Bは3,500÷0.015÷84,000で、比率はどちらも約2.78倍です。しかしCAC÷月間粗利は12か月と24か月。Bは顧客1人あたりの先行支出も大きく、同じ顧客数を獲得するならより多くの資金が必要です。

この12・24か月は、月間粗利を一定とした簡略指標です。全顧客がそこまで残る保証ではありません。実際のコホートの累積粗利、支払条件、解約、入金時点を追うと回収結果は変わります。比率が同じでも、会社の資金事情によって選べる投資は異なります。

3倍・12か月を普遍的な合格線にしない

月間粗利をg、正の月次チャーンをc、単純回収月数をmとすると、上のモデルではCAC=g×mなので、LTV/CAC=1÷(m×c)です。境界値の12か月・3%を入れると、1÷(12×0.03)=約2.78となります。

約3と丸めること自体はできますが、「回収12か月以下・0%より大きく3%未満のチャーン」から比率が3前後へ収束するとは導けません。比率は約2.78より大きくなり、上限は決まりません。また、その数値から会社の健全性が証明されるわけでもありません。固定費、契約期間、予測誤差、成長段階、資金調達条件を別に確認します。

予測が外れた場合も試算する

ケースAで月間粗利とCACを固定したまま、チャーンを3%から5%に変えると、予測LTVは約116,667円から70,000円、比率は約2.78倍から1.67倍に下がります。単純回収月数の12か月は変わりませんが、実際にその月数まで残る顧客は減る可能性があります。

これは条件を動かした感度分析で、改善施策の実績や因果効果ではありません。解約率を下げるために値引きやサポートを増やせば、粗利や維持費も変わります。1つの変数だけで楽観的に予測しないようにしましょう。

費用対応と現金の制約を確認する

CACの費用範囲と時間差も確認し、獲得前の支出と、後から増える顧客を同じ対象に対応させます。CACの集計・配賦ルールで、何を新規顧客とし、どこまで費用へ入れたかを固定できます。

  1. 成熟した獲得コホートの実績と、将来予測を分ける。
  2. チャーン・粗利・獲得費の悪化を含む複数ケースを試算する。
  3. 先行支出、入金、固定費、最低限必要な現金余力を月次で並べる。
  4. 追加獲得でも同じ効率が続くかを小さな投資で検証する。

比率が高いだけで投資不足、1〜3倍だから黒字と判断することはできません。顧客層と施策を選ぶ具体的な使い方は、マーケティングでのLTV活用で確認し、実測できた価値と予測の不確実性を合わせて投資を決めましょう。

投資判断で決めた月次予算と実績の管理先が必要な場合は、Xtrategyの予算・実績管理でメディア・労務・外注費の予実を確認できます。

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