マーケティングのリソース計画|人員と工数をキャンペーンに配分する方法
予算は配分できているのに、人の割り振りは感覚で決まっている。四半期が始まってみると、特定のメンバーだけが複数施策を抱えて回らなくなる。マーケティングのリソース計画が難しいのは、人の稼働が予算とは違う性質を持つからです。この記事では、人員と工数を施策に配分するときの判断を整理します。
予算配分と決定的に違う点
最初に押さえておくべき前提です。人の稼働は、予算と同じようには扱えません。
繰り越せない
予算は今月使わなければ来月に回せることがありますが、人の稼働は消えます。今月10人日空いていたとしても、来月に10人日足されるわけではありません。
つまり、余らせた分はそのまま損失です。逆に足りない分を後から補うこともできません。予算のように年間で調整する発想が通用しない点が、リソース計画の難しさです。
置き換えが効かない
予算は100万円あればどの施策にも使えますが、人はそうはいきません。デザイナーが空いていても、広告運用の穴は埋まりません。
合計工数だけを見て「チーム全体で40人日空いているから足りる」と判断すると、実行段階で特定の職種だけが詰まります。配分は職種ごとに見る必要があります。
施策の性質で工数の形が違う
配分する前に、施策を性質で分けておくと計画が立てやすくなります。
運用型の施策
広告運用、SNS運用、メール配信など、期間中ずっと一定の稼働が必要な施策です。工数は毎週おおむね同じ量で発生します。
この型の注意点は、止めるまで稼働が消えないことです。新しい施策を足すとき、既存の運用型施策の分を引いた残りが、実際に使える工数になります。
単発型の施策
イベント、キャンペーン、サイト制作など、始まりと終わりがある施策です。工数は特定の時期に集中します。
山がどこに来るかを把握しておくことが重要です。総工数が同じでも、山が重なるか分散するかで、必要な人数が変わります。
突発対応
計画には載らないが必ず発生する稼働です。他部署からの依頼、トラブル対応、急な資料作成など。
ここを計画に入れないと、必ず破綻します。過去の実績から割合を出して、あらかじめ枠として確保しておくのが現実的です。
配分の手順
- 使える工数を出す:人数×営業日から、会議や事務作業の分を引きます。稼働率70〜80%が現実的な水準です
- 運用型と突発対応を先に引く:止められない稼働を確保します。残りが新規施策に使える分です
- 単発施策を時期で並べる:工数の山がどこに来るかを確認します
- 職種ごとに過不足を見る:合計ではなく、デザイン・運用・分析といった単位で確認します
- 溢れた分の扱いを決める:時期をずらす、外注する、やらないの3択から選びます
2つ目の順序が重要です。新規施策から先に埋めていくと、既存の運用が圧迫されていることに気づかないまま計画が完成します。
兼務をどう扱うか
マーケティングチームでは、1人が複数施策を持つのが普通です。ここに落とし穴があります。
計算上は、1人を0.5と0.3と0.2に分けて3施策に配分できます。しかし実際には、施策を切り替えるたびに頭を切り替える時間が発生します。
目安として、1人が同時に持つ施策は3つまでが限度です。4つを超えると、切り替えのコストが無視できなくなり、どの施策も進みが遅くなります。
分けるなら時期で分ける
同じ人が3施策を持つ場合でも、期間を分ければ切り替えは減ります。前半は施策Aに集中し、後半は施策Bに移る形です。
常時0.3ずつ3施策に張り付くより、期間を区切って順に集中するほうが、同じ工数でも進みます。
計画が崩れる典型パターン
- 差し込み案件を数えていない:営業からの依頼や経営層からの資料要求は、計画外で必ず来ます
- 修正回数を見込んでいない:制作物は一度で通りません。確認と修正の往復が工数の2〜3割を占めます
- 運用型施策の増加に気づかない:施策が増えるたびに固定稼働が積み上がり、新しいことをする余地が減ります
3つ目は特に見落とされがちです。半年前に始めた施策が今も動いているなら、その分の稼働は毎月消費され続けています。定期的に棚卸しをして、止める判断をしないと、いずれ新規施策に回す工数がなくなります。
溢れたときの3つの選択肢
配分してみて工数が足りないと分かったとき、取れる手は3つしかありません。
- 時期をずらす:最も影響が小さい選択肢。ただし機会を逃す施策もあります
- 外注する:予算が必要なうえ、管理する工数は自社に残ります
- やらない:最も選びにくいが、最も確実な選択肢です
2つ目で見落とされるのが、外注しても管理工数は残るという点です。ディレクションと確認の分は自社に発生します。全部が浮くわけではありません。
この3択を関係者に示して判断を引き出すところまでが、リソース計画の仕事です。「頑張って全部やります」で持ち帰ると、実行段階で全部が中途半端になります。
よくある質問
Q. どのくらいの粒度で計画すべきですか
月単位が実用的です。週単位は精度が上がる一方で、更新の手間が増えて続きません。四半期単位では、山の重なりが見えません。
Q. 工数の見積もりが当たりません
実績を記録していない可能性が高いです。過去に似た施策で何人日かかったかが分かれば、精度は上がります。最初は粗くて構わないので、終わった施策の実績を残すところから始めてください。
Q. 突発対応はどのくらい見込めばよいですか
チームによって差が大きいので、自社の実績から出すのが確実です。目安が欲しい場合は、まず全体の1〜2割を枠として置いてみて、足りるかどうかで調整してください。
Q. 人を増やせば解決しますか
短期的にはむしろ遅くなります。新しいメンバーが戦力になるまでは、既存メンバーの時間を使うためです。増員が効くのは、数ヶ月先を見据えた計画の場合です。今月足りない分は、増員では埋まりません。
計画を維持するために
リソース計画は、立てた時点で終わりではありません。実際の消化と並べて、ずれを見つけて調整し続ける必要があります。
ただし、計画がスプレッドシート、実績が工数シート、施策の進捗が別の管理表に分かれていると、突き合わせのたびに転記が発生します。Xtrategyでは、施策のスケジュールと予算・KPIを同一画面で管理し、複数の施策を横断して状況を確認できます。
まとめ
- 人の稼働は繰り越せず、職種をまたいだ置き換えも効かない
- 施策を運用型・単発型・突発対応の3つに分けて考える
- 配分は、運用型と突発対応を先に引いてから新規施策に回す
- 1人が同時に持つ施策は3つまで。分けるなら時期で分ける
- 合計ではなく職種ごとに過不足を見る
- 溢れたら、時期をずらす・外注する・やらないの3択から選ぶ
リソース計画で最も効くのは、使える工数を正しく出すことです。人数×営業日をそのまま使うと、必ず足りなくなります。まずは既存の運用型施策が毎月どれだけ消費しているかを数えるところから始めてみてください。