マーケティングROIの計算方法|ROASとの違いと費用範囲
与謝秀作

マーケティングROIは、対象の利益と投資額の関係を確認する指標です。このページでは、ROI=(マーケティング投資を差し引く前の対象粗利益−投資総額)÷投資総額と定義します。百分率で表す場合は100を掛けます。
重要なのは「利益」の中身です。すでにマーケティング費用を差し引いた利益を分子に使い、そこから同じ投資を再び引くと二重控除になります。どの原価・費用を含むかを計算前に決めましょう。
同じ例でROIとROASを比べる
以下は架空の例です。対象施策へ帰属した売上1,000万円、提供原価500万円、広告費100万円、制作・運用費50万円とします。投資控除前の粗利益は500万円、投資総額は150万円です。
指標 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
ROAS | 売上1,000万円÷広告費100万円 | 1,000% |
ROI | (粗利益500万円−投資150万円)÷150万円 | 約233.3% |
投資後の対象利益 | 500万円−150万円 | 350万円 |
ROASは広告費に対する売上比率で、原価や制作・運用費を反映しません。ROASが高くても利益率が低ければ十分な利益が残らない場合があります。GoogleのROI説明も参照し、自社のレポートでは採用した費用範囲を明記してください。
投資総額に含める費用を決める
費用 | 確認すること |
|---|---|
広告媒体費 | 代理店請求との重複、税、対象期間 |
制作費 | LP・記事・動画・デザインの対象範囲と利用期間 |
運用・分析費 | 外注契約に含まれる内容、社内工数の配賦 |
ツール | 施策専用か共通費か、配賦基準 |
営業関連費 | 今回の指標に含めるか、別の獲得費用として扱うか |
全社の意思決定では共通費も確認しますが、短期の追加施策の判断では増分費用を別に見ることがあります。比較対象によって範囲を変える場合は「全費用ベース」「追加費用ベース」などと表示し、数字だけを横並びにしません。
CPA・CACは成果の単位が違う
同じ例で問い合わせ100件、新規顧客10件なら、広告費だけの問い合わせCPAは1万円です。制作・運用を含む問い合わせ単価は1万5,000円、同じ150万円を新規顧客10件で割ったCACは15万円です。
ここでのCACは別途の営業費用を含まないため、全社の顧客獲得費用と同一ではありません。問い合わせや資料請求のCVを、そのまま新規顧客と数えないようにします。
売上・利益率・費用で感度分析する
架空シナリオ | 売上 | 投資前粗利益率 | 投資 | ROI |
|---|---|---|---|---|
基準 | 1,000万円 | 50% | 150万円 | 約233.3% |
粗利益率が低下 | 1,000万円 | 30% | 150万円 | 100% |
投資が増加 | 1,000万円 | 50% | 200万円 | 150% |
売上が減少 | 600万円 | 50% | 150万円 | 100% |
投資150万円、粗利益率50%なら、この単純モデルの損益分岐となる対象売上は150万円÷50%=300万円です。ただし共通費や回収までの時間、リスクを含めた事業判断は別に必要です。ROIがプラスだから無条件に増額するとは限りません。
期間と回収までの時間を合わせる
問い合わせから受注まで数か月かかる事業では、当月広告費と当月売上が同じ獲得集団に対応しないことがあります。獲得月や案件作成月を基準に追い、まだ受注していない案件を途中結果として残します。
架空例でCAC15万円、顧客1人当たり月次粗利益3万円が一定なら、単純な回収期間は5か月です。解約、売上変動、初期支援費、入金条件を無視した簡易値なので、実際の資金回収とは分けて扱います。
帰属利益と増分利益を区別する
計測ツールが広告へ付けた売上は、広告がなくても生じた売上を含む可能性があります。アトリビューションによるROIは、広告の因果効果をそのまま示すものではありません。比較可能な対照を用意した実験などで、施策による純増を評価する場合とは区別します。
PRの広告換算額や、表示回数に仮の価値を掛けた金額も実際の利益ではありません。認知や理解を目的にする施策は、適した中間指標と事業への寄与を別に設計します。
月次レビューの確認項目
- 売上・原価・投資の対象期間と範囲が一致しているか。
- 投資を利益から二重に差し引いていないか。
- 返品・取消・重複・未確定の売上を整理したか。
- 問い合わせCPAと顧客CACを区別したか。
- 短期回収と長期的な育成を同じ期間で比べていないか。
- 前提が変わった場合のROIと、次の判断を記録したか。
ROIは判断材料の一つです。粗利益額、獲得の質、回収期間、実行能力を一緒に見て、改善する費用や施策を決めましょう。
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