マーケティング戦略の基礎|戦術との違いと最初に決める5項目
与謝秀作

マーケティング戦略とは、事業目標に向けて「どの顧客の、どの課題に、どの価値を提供し、なぜ選ばれるか」を定め、限られた人員や予算を配分する方針です。広告やSNSを実施すること自体は戦略ではありません。施策を選ぶ基準が言語化されていることが重要です。
目標・戦略・戦術・計画の違い
区分 | 答える問い | 仮想のBtoBサービスの例 |
|---|---|---|
目標 | どんな事業成果を目指すか | 特定顧客層で継続契約を増やす |
戦略 | 誰に、なぜ選ばれるか | 専任担当のいない小規模チームに、導入支援込みの使いやすさを提供 |
戦術 | 何を実施するか | 設定手順の記事、体験会、利用者向けデモ |
実行計画 | 誰が、いつ、いくらで行うか | 担当者、制作費、公開日、判定日を決める |
「業界No.1になる」は目標や願望であり、それだけでは戦略になりません。「SNSを強化する」も手段の選択です。どの顧客が何に困り、既存の代替手段では何が満たされないのかまで説明できる状態を目指します。
最初に決める5項目
- 対象顧客:属性だけでなく、利用場面、課題の頻度、購買のきっかけを整理する。
- 解決する課題:顧客の言葉と観測した行動を集め、社内の推測と区別する。
- 提供価値:機能名だけでなく、顧客の仕事や暮らしがどう変わるかを説明する。
- 選ばれる理由:競合製品、内製、現状維持と比べて、自社が提供できる違いを示す。
- 資源配分とやらないこと:優先顧客、チャネル、担当、投資の上限を決める。
顧客理解から方針を作る
まず受注・失注の記録、問い合わせ、利用開始時のつまずきを読みます。既存顧客だけでは未購入者の理由を捉えにくいため、検討をやめた人や代替手段を選んだ人の声も確認します。数件の面談は仮説を作る材料であり、市場全体の割合を示す調査とは区別してください。
次に、顧客の重要な課題と自社が提供できる価値が重なる対象を選びます。年齢や企業規模が同じでも、急いで解決したい人と情報収集中の人では必要な説明が異なります。選定後に商品・価格・販路・伝え方を揃えます。対象を決めるSTPと、届け方を考える4Pはこの順序を助ける道具です。
一文にするための記入例
項目 | 仮想例 | 確認すべき根拠 |
|---|---|---|
対象 | 設定作業を兼任する小規模チーム | 担当体制と現在の作業記録 |
課題 | 契約しても初期設定を完了できない | 離脱理由とサポート問い合わせ |
価値 | 支援を受けながら業務を開始できる | 提供できる支援範囲と工数 |
違い | 最安値より導入の確実性を重視 | 競合の支援範囲と顧客の支払意思 |
優先しないこと | 個別開発が前提の大企業案件 | 必要工数と今期の受入余力 |
方針の例は「初期設定を兼任する小規模チームに、支援付きの導入体験を提供し、複雑な個別開発案件よりも標準機能で開始できる顧客に集中する」です。この仮説が顧客の実態に合うか、小さな商談や導入テストで確かめます。
戦略を変えるべきとき、戦術を直すべきとき
対象顧客が価値を認めているのに申込フォームが使いにくいなら、まず導線を改善します。一方、問い合わせが集まっても対象顧客がその課題を優先していないなら、訴求文の修正だけでなく対象と価値の見直しが必要です。結果が出ない理由を一律に集客不足と決めつけないでください。
レビューでは成果だけでなく、前提が崩れたかを確認します。主要な失注理由、導入後の利用、粗利、提供工数を一緒に見ます。評価期間は購買・継続のサイクルに合わせ、短期間のクリック数だけで長期方針を変更しません。具体的な予算・役割・評価表は、関連する実行計画ガイドで作成できます。