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マーケティング管理会計|施策別P/Lと損益分岐点の作り方

与謝秀作

マーケティング部門のための管理会計入門|施策別の収益性を見える化する方法

マーケティング管理会計は、施策ごとの売上と費用を意思決定に使える形で集計する仕組みです。広告費だけを売上から引いて利益とせず、商品・サービスの提供原価、獲得費、共通費を分けることから始めます。社内の施策別P/Lは、法定の財務諸表を置き換えるものではありません。

まず月次で「どの施策に、いくら使い、どの成果を関連づけたか」を説明できる表を作ります。そのうえで、追加予算を出す判断と、組織全体の費用を負担できるかという判断を分けます。

費用は2つの軸で分類する

軸

区分

判断基準

例

活動量との関係

固定費・変動費

定めた期間・活動範囲で総額が変わるか

月額契約費/注文ごとの配送費

施策との関係

直接費・間接費

特定施策へ直接たどれるか

専用LP制作費/全社共用ツール費

月額固定の専任担当費は直接費にもなり、注文量で変わる共通配送費は間接費にもなります。「直接費=変動費」ではありません。また、広告費はクリックに応じて変わっても、販売数量に一定比例するとは限りません。損益分岐点を計算する際には、何を活動量とするかを明示します。

OpenStaxの管理会計教材でいう限界利益は、売上から変動費を引いた額です。売上原価を引く粗利益とは分類軸が異なります。提供に伴う変動費を落としたまま「限界利益」と呼ばないようにしてください。

架空の施策別P/Lを作る

以下は月次の社内分析例です。税抜きで、対象商品は1個1万円、500個販売。商品・決済・配送を合わせた変動費は1個4,000円と仮定します。広告と代理店には月次の固定予算を確保し、この販売範囲では総額が変わらないものとします。

項目

金額

読み方

関連づけた売上

5,000,000円

500個×10,000円

提供に伴う変動費

2,000,000円

500個×4,000円

限界利益

3,000,000円

売上−すべての変動費

固定の広告予算・代理店費

1,200,000円

期間固定という仮定

施策専任の人件費等

600,000円

当該施策の固定直接費

共通費配賦前の施策利益

1,200,000円

限界利益−固定直接費

共通費配賦

400,000円

管理部門・共用システム等

共通費配賦後の施策利益

800,000円

全体負担を含む見方

最終行はこの表に含めた費用の範囲での利益です。金利や税、未配賦費用があれば会社全体の最終利益とは一致しません。逆に、共通費配賦後が赤字でも、その施策をやめて共通費が減らなければ、会社全体の利益が改善するとは限りません。

損益分岐点と回収期間を分ける

この例の単位限界利益は10,000−4,000=6,000円です。共通費配賦前の月次損益分岐点は固定直接費1,800,000÷6,000=300個、売上では300万円です。配賦後の固定費220万円を負担するには、2,200,000÷6,000=366.67個なので、整数販売なら367個が必要です。

ただし、売上が増えるほど広告費も増やす必要がある、追加担当者が必要になる、商品構成が変わる、といった場合は前提を更新します。一定の価格・単位変動費・固定費を置いた試算であり、現実の売上を保証するものではありません。

初期制作費が120万円あり、その投資による増分の月次ネットキャッシュ流入を20万円と見込むなら、単純回収期間は6か月です。損益計算上の利益をそのままキャッシュ流入としないこと、上の月次費用と初期支出を二重に計上しないことが条件です。継続期間や入金遅延が変われば回収も変わります。

施策に売上を関連づけるルール

  1. CRMの案件ID・注文IDを決め、同じ売上を各施策に100%ずつ重複計上しない。
  2. 初回接点、最終接点、均等配分など、利用する帰属ルールと対象期間を記録する。
  3. 月次の請求・費用と、獲得月別の顧客群の成果を別表で確認する。
  4. 返品・取消・値引き・営業の追加作業を反映し、翌月の修正を残す。

帰属モデルで割り当てた売上は、施策が原因で増えた売上とは限りません。追加投資の効果を確かめる場合は、比較可能な対照群や段階導入などの設計が必要です。P/Lだけから因果効果を断定しないようにします。

月次会議で使う記入シート

記入項目

担当と確認内容

対象月・施策・責任者

マーケ担当が対象と範囲を固定

売上・原価の確定状況

営業・経理が未確定額を区別

配賦基準・配賦前後利益

経理と基準変更の影響を説明

計画との差の原因

数量・単価・原価・時期に分解

次月の判断

継続/改善/縮小と必要条件

次回確認日

受注までの時間差を踏まえて設定

まず1施策で元帳と総額を照合し、同じルールで翌月も作れるか確認してください。精密に見える配賦比率より、数字の定義と変更履歴が共有されていることが実務では役立ちます。

次に読む実務ガイド

施策と予算を継続して管理する

Xtrategyでは、プロジェクト、月次の予算・実績、顧客・案件情報を管理できます。この記事で決めた担当者・費用・確認日を運用に落とし込む際は、機能紹介で必要な管理範囲を確認し、利用を始めるから検討してください。

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